8月23日、私は弁護士グループ「期成会」の合宿(神奈川県箱根湯本)に呼んでいただき、上映と講演をやらせていただいた。参加者は30人、そして交流を行った。この話を、上映会の前に当事者訴訟元原告の一人に話すと「それはすばらしい」と大変喜んでいた。

実は、法律家に限らずだが2022年2月の石垣市議会での住民投票条例案、賛否同数で議長採決否決後、この件について様々な反響があった。否決の次の日の新聞記事では、「石垣市自治基本条例は不十分」というコメントを発するコメンテーターが出たり、また自治基本条例の運動を進める側の知識人の中にもそれに近い発言をする人もいた。またこの事件に対する法律家の反応は、活発とは言えなかったという私の印象だ。元原告の反応は、その反映でもあると思う。
だから、今回は主催者からもすすめられ、法律家としての感想を求めた。すると反応はすばらしかった。次から次へと質問と意見が出された。
その中で印象に残ったものをあげると、「当事者訴訟の控訴審判決では判決文の『地方公共団体は間接民主制を基本としており、住民投票はその例外である』について、『例外』というからには、住民投票の存在を否定しているわけではない」とかまた「最高裁判決で『控訴人は違憲を言うが、法令違反が問われている』という書き方は違憲の主張は否定しているもの、国内法の法令違反をめぐる訴訟であることは認めている」など。なるほどと思った。裁判では負けたかもしれないが、法理論として負けたわけでは決してないのである。

そして、こんな意見もあった。「裁判は、民主主義を問うものであるから確かに勝ち負けはある。しかし、映画の中でも言われているように、勝ち負けではない重要な問題が問われているのではないのだろうか」という発言である。失礼ながらこれは法律家らしくない発言だが、ここが重要なポイントなのだろう。
石垣市住民投票裁判は基地賛成反対を問わず、どのような島をめざすのか、どのような社会をめざすのかを話し合う過程や手段でもあったのである。(湯本雅典・2025年8月24日)
●お知らせ
8月31日(日)チラシにあるように東京都小平市(小平元気村小川東・東京都小平市小川東町4丁目2-1)で「拝啓 住民投票さま 石垣島のまんなかで起きたこと」(46分)の上映会があります。そこで、私湯本の方から先日の石垣市長選挙の報告を短い映像を交えて行います。ぜひ、ご参加ください。