「なんのちゃんの第二次世界大戦」

「なんのちゃんの第二次世界大戦」(渋谷・ユーロスペース。毎日18:00~。5月8日封切)を観た。びっくりした。どんでん返しの連続である。河合健監督の言葉「僕が戦争に対して切実に感じること。それは戦争の悲惨さよりも前に、語り手によって事実が簡単に崩れ落ちてしまう恐ろしさだ」(映画プログラムより)に、映画の内容が凝縮されている。

平和記念事業として平和記念館建設を市政の最重要課題とする市長、清水昭雄(吹越満)。しかし、簡単にその事業はすすまない。それはよくある右翼による反対があるからではない。市長自身がかかえている問題もはらんでいた。このことを発端に、事態は横に縦に入り乱れていく。そんな感じで、少なくとも僕が出会ったことのない「反戦??」映画に仕上がっていったのだ。

個人的な話だが、僕は戦争の記録がこの国はあまりにもない国だと嘆いていた。東京都に公立の東京大空襲資料館はない。また、僕の住む品川区は数千人の満州開拓移民団を出し、ほんの数%しか生還されなかった事実があるのに、その資料が展示されている施設は皆無だ。だからこの映画の入り口には、とても興味があった。しかしその期待は、いい意味で裏切られた。(裏切ってもらってよかった)河合監督と映画終了後に少しお話しができた。

僕にとっては、今石垣島のミサイル基地建設にかかわる若者たちを撮っている関係で、貴重な話を聞けた。彼の言葉、「戦争、平和の概念を壊したかったんです」「いろいろな反響があります。当然です」。僕が関わっている石垣島の若者たち、彼らの戦争観と僕の戦争観はかなり違うことは、当初から感じていた。しかし、それとどうつきあうのか。少し、いやかなりとまどいながらカメラを回していた。そこが、少しわかったような気がする。

上映会を開催するとご年配の方から、「若い人にどう伝えるか」という意見、質問がほぼ毎回出る。そこへの答えをなかなか見出せないでいたが、今は少し言えるような気がする。大事なことは、若い人を「よく見ること」。というか、それしか言えないという方が正直なところか。

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